海と陸がつながる生態系

北方四島は、戦後、ソ連(現在のロシア)が実効支配してきた地域であり、陸地面積のおよそ7割、沿岸海域のほぼ6割が、何らかの形で人為的な開発から守られてきました。その結果、他の多くの地域では失われつつある自然環境が、長い時間をかけて保全されてきました。 こうした保護の積み重ねにより、北方四島では半世紀以上の年月を経て、原生的な動物群集が見事に復元されています。陸と海が連続した生態系が維持され、多様な生き物が本来の姿のまま暮らす環境が残されてきました。その生物多様性の高さは世界的にも評価されており、北方四島は地球規模で見ても極めて貴重な自然地域の一つとなっています。 この地域は、人の影響を受けにくい環境がどのように生態系を育み、支えてきたのかを知ることができる、まさに「生きた自然の資料庫」とも言える存在です。

知る 海と陸の相互作用

私たちは、ビザなし専門家交流の枠組みのもとで自然生態系調査を継続してきました。その結果、この地域と周辺海域が、世界最南の流氷限界域に位置することなどから、非常に高い生物生産性と生物多様性を維持してきたことを明らかにしてきました。 一方で、近年進む産業開発や地球温暖化の影響により、この貴重な自然が今後どのように変化していくのかが課題となっています。私たちは、その変化を見逃さないよう、長期的な視点でモニタリングを続けています。

伝える 海が豊かだと、
陸も豊かに

私たちは、海と陸をつなぐ生き物たちの関係を調査することで、 海が豊かであれば陸もまた豊かになる ということを、学術的に明らかにしてきました。調査を通じて蓄積してきたデータや映像から、この相互作用の背景には、世界最南の流氷限界域に位置することによって生み出される、極めて高い生物生産性と生物多様性があることが示されています。
さらにその豊かさは、陸上の保護区だけでなく、沿岸海域を含めて守ってきた政策の積み重ねによって支えられてきたものだと考えられます。

出版物

  • 北方四島―北の海の生きものたち
    北の海の動物センター発行 2003
  • カラー版 知床・北方四島―流氷が育む自然遺産 (岩波新書)
    大泰司 紀之 (著), 本間 浩昭 (著) 2008
  • オホーツクの生態系とその保全
    桜井泰憲, 大島慶一郎他 2013

取り組む 海を含めた
保護区の在り方

陸域だけでなく海域も含めた保護区が設定されたことで、陸と海をつなぐ本来の生態系が見事に復元してきた北方四島の事例をもとに、私たちは新しい保護区のあり方を提言しています。私たちはこの知見を踏まえ、陸と海を包括的に保全する新たな保護区の考え方を提示し、持続可能な自然保全の実現に向けた議論につなげていきたいと考えています。