流氷からはじまる生態系

オホーツク海は、世界でも最も南まで流氷が訪れる、特別な海です。冬のあいだ海を覆っていた流氷が春の訪れとともに溶け始めると、氷の中に生きていた植物プランクトン(アイスアルジー)が海へと解き放たれます。これをきっかけに、「氷縁ブルーム」と呼ばれる大規模な増殖が一気に起こります。 大量に増えた植物プランクトンは、オキアミやカイアシ類といった動物プランクトンの大切な餌となり、さらにそれを求めて、魚や海鳥、海生哺乳類など、さまざまな海洋動物がこの海へ集まってきます。オホーツク海には、流氷から始まり、命が次々とつながっていく、壮大な生態系が息づいているのです。

知る 高次捕食者の役割

オホーツク海は、季節の移り変わりとともに、姿を見せる海生哺乳類の顔ぶれが大きく変化する海域です。季節ごとに異なる命の営みが重なり合い、この海ならではの豊かな生態系が形づくられています。 私たちは、そうした季節変化に着目し、海生哺乳類の生息密度や分布、行動、食性を継続的に調査しています。生き物たちがどのように環境と関わりながら生きているのかを明らかにすることが、私たちの重要な役割です。 近年進む流氷の減少や後退時期の早まりが、海生哺乳類にどのような影響を与えているのか。私たちはその変化を見逃さないよう、長期的なモニタリングを続け、オホーツク海で起きている「いま」を記録し続けています。

伝える 一緒に海を調査しよう! (あばしりネイチャークルーズ)

鰭脚類や鯨類、海鳥類、そして彼らが暮らすオホーツク海の環境を、ぜひ実際に見て、感じてみてください。オホーツク海にとって流氷がどれほど大切な存在なのかを、目の前の景色や体験を通して実感しながら、これまで私たちが積み重ねてきた調査 データをもとに、一緒に考えてみましょう。 調査船チパシリに乗り、私たちが行っている調査の一端を実際に体験してみませんか?研究の現場を間近に感じられる、その特別な時間を味わえるのが「あばしりネイチャークルーズ」です。

私たちの取り組んでいる調査を紹介します!

  • 流氷期調査

    流氷の上でアザラシを探しに行こう!
    流氷が一面に広がる季節、船に乗って、氷の上に姿を見せるアザラシを静かに探し、観察します。冬のオホーツク海の厳しくも美しい自然を間近に感じながら、ここでしか出会えない貴重なアザラシの生態を学ぶ調査です。
  • 海の環境調査

    海の環境を調べて生き物との関係を理解しよう!
    定期的に海水を採取し、水温や塩分濃度を測定するとともに、潮目の位置や海の見え方を観察します。さらに、オキアミやクラゲなど、海に生きる小さな生き物たちの出現も記録します。こうした環境のデータを積み重ねることで、海と生き物の関係を探る調査です。
  • ナガスクジラ調査

    ナガスクジラの個体を識別しよう!
    ナガスクジラの背鰭周辺の特徴を写真に収めて個体を識別し、ドローンを使って体長を測定します。こうした一つひとつのデータが、ナガスクジラの行動や成長を理解するための大切な手がかりとなり、その生態をより深く知ることにつながる調査です。
  • 音響調査

    音で鯨類の位置を特定!
    マイクを使って、鯨類がどこにいるのか、そしてどのような音を発しているのかを調べます。姿が見えない海の中でも、音を使って暮らす鯨類の生態に迫る、欠かすことのできない調査です。
  • クロツチクジラ調査

    クロツチクジラの浮上を待つ調査
    クロツチクジラが海面に浮上している時間と潜水している時間を記録し、潜水パターンを明らかにします。さらに、ドローンを使って個体識別のための写真を撮影し、水中マイクで鳴き声も記録します。謎の多いクロツチクジラの生態に迫る調査です。

取り組む オホーツクの海を
どう守るか オホーツクの海と
どう付き合っていくか?

刻々と姿を変えていくオホーツク海と、私たちはこれからどのように向き合っていけばよいのでしょうか。気候変動や流氷の変化など、海を取り巻く環境は確実に変わりつつあります。そうした変化を正しく知り、見つめ、考えることが、いま私たちに求められています。 私たちは、現場での調査や長年にわたって蓄積してきたデータをもとに、オホーツク海の「いま」を伝え、私たちの立場だからこそできる具体的な行動や選択肢を提言していきます。海と共に生きる未来のために、一人ひとりが何を大切にし、どのように関わっていけるのかを考えています。